水無瀬さんごのブログ Season2

ゼロ年代口調を抑えきれない ※技術力要素はありません ※文章力要素もありません

フレッツ・テレビにおける4K/8K放送はかなり特殊だった

我が家ではフレッツ・テレビを導入しているところ、新4K/8Kも伝送されてくるのかと思い、少し調べてみた。
www.ntt-west.co.jp
右旋4Kは放送開始と同時に、左旋4K/8Kは来年夏以降の対応となるということだ。

ところがこのプレスリリース、一見してなるほどと思ってしまったが、
実はかなり不穏である。
左旋BS/CSだけ謎のアダプターが必要なのだ。
www.ntt-west.co.jp

この技術、謎技術かと思ったところ、この日経の記事に詳細があった。
www.nikkei.com

スカパーJSATおよびNTT東西が採用する方式では、BSや110CSの左旋波の信号の周波数を変換し、地上デジタル放送とBS/110CS放送の間に配置して光伝送する。テレビのチューナーに入力する直前で周波数を元に戻す専用アダプターを用意する。

計画では、18年12月1日の新4K8K衛星放送の開始に合わせて、BS右旋波の4K放送の提供開始を18年12月1日に予定する。その後、19年夏頃をメドに、フレッツ・テレビなど光回線を使ったテレビサービスにおいて、周波数変換した形の左旋波の信号を含む新4K8K衛星放送が光波長多重されて各家庭まで届けられるようになる。

なるほど……なるほど?
となると上の図はかなりミスリーディングだ。というのも、BS/CSは(ごく乱暴な言い方をすれば)そもそも12GHzの電波を1~2GHzあたり(これを中間周波数、IFという)まで変換して映像にしている。だから変換した後にDECT方式との衝突を起こしたりするのだ。
図によればフレッツテレビではまるで12GHzの電波をそのまま宅内まで配信しているかのようであるが、実際にはフレッツテレビはBS/CS-IFパススルー、つまり中間周波数(IF)である1~2GHzの電波を宅内まで送信している。

以下の画像は
http://www.soumu.go.jp/main_content/000443389.pdf
からの引用である。
そもそも、BS/CSの右旋・左旋の関係はこういう感じになっている。
f:id:minasesango:20181111222758p:plain
これを中間周波数に変換すると、
f:id:minasesango:20181111222858p:plain
とか、左旋では
f:id:minasesango:20181111222918p:plain
というふうになるわけである。
地デジは大体700MHzで終わるので(実際にはもっと少ない)、BS/CSが始まる1GHzまでの中間周波数の間隙を利用してBS/CS左旋波を伝送しようという。
それで自前のコンバータをテレビの直前に置いてやれば、700MHzあたりに変換しておいた信号を2GHzとかその辺に無事変換してテレビは何事もなく映るという仕掛けだ。

この方式にはわかりやすいメリットがあり、左旋中間周波数(2.2GHz~3.3GHzぐらい)に対応したケーブルを使わなくてもいいということだ。
宅内のケーブルが現在のCS110度のND24あたりまで無事見られていれば、それより高周波を使うことがないので、テレビの直前のコンバータ~テレビという短い間だけを高周波対応(いわゆる4K8K対応)にすればいい。

しかしデメリットというか……できるの?いやできるんだろうけど……。うーん。まあできるんだろうなあ。だけど……。
何か釈然としないものがある。

ところでBS左旋の中間周波数帯には「超激戦区」の2.4GHz付近が含まれている。
Bluetooth無線LAN、電子レンジ等々混信の原因だらけだ。
総務省中間周波数の漏洩防止を呼びかけるウェブサイトまでできている。
総務省|4K放送・8K放送 情報サイト|中間周波数の漏洩 −新4K8K衛星放送開始に向けたBS・110度CSの左旋偏波の中間周波数の漏洩について−

それと、実際どういうストリームが流れてくるのか、
地デジの場合は.tsでおなじみのMPEG-2-TSが降ってくるわけだけれど……そのあたりを調べようとARIBの資料を当たろうとしたら、
ありゃまあ有料化されているでやんの。
www.arib.or.jp
そういうのは無料で公開しなさいよね、こういう時代なんだから。

ただ、知りたかったことのサマリについては手に入った。
http://www.pixela.co.jp/company/event/2017/0216/data/20170216_presentation2.pdf
によると、
f:id:minasesango:20181111225454p:plain
ということである。ほうほう、HEVC/H.265に60Hzプログレッシブか。なかなか豪華ではないか。

さて、
Diary 2016-12
地デジの時は、フリーオという「空気の読まない」デバイスによってコピーガードが無効化されたわけだけれど、
4K8K放送ではそういうことは起こらなさそうだということだ。
もっとも、4K8K対応キャプチャボードで無理矢理複合化した映像をブン盗れば録画自体はできてしまうのだけれど、
地デジのように取り回しがいい形式でゲットすることは難しいようだ。

果たして4K/8Kは無事この先生きのこることができるのだろうか?
こういうものは、往々にして普及を急ぐがあまり強固な仕様を運用でアレするということが発生するものだけど、
いつそれが発生するだろうか?